研究概要 |
本研究の目的は,「日本人英語学習者の語用論的能力を発達させるために,有効な教授法はどのようなものか」を研究テーマとして,学習者の語用論的能力の発達過程をより詳細に記述をした上で,語用論的能力の指導モデルを構築し,各発達段階に有効な教授法を明らかにすることである。 これまでに,動機づけ要因が語用論的意識に及ぼす影響を,アンケート調査を基に考察した。その結果,より自律的である学習者ほど,語用論的誤りへの気づき度が高いことが明らかとなった。換言すれば,より自律的である学習者ほど,形式へのnoticingから,語用論的内容を含めたunderstandingへの意識の移行(Schmidt,1995)がなされていることが示唆された(田頭・大和・磯田,2011)。また,習熟度を要素の一つに加えた調査では,先と同様の傾向が見られたことに加え,必ずしも習熟度が高い方が,語用論的意識が高い訳ではないことが明らかとなった(大和・田頭・磯田,in press)。 これらの結果を受け,平成23年度においては,語用論的能力の発達過程の明確化の一環として,測定方法の観点から心理言語学的手法である反応時間測定を用いることを検討してきた。その準備段階として,依頼表現のうちどのような表現が最も典型的であるのかについて調査を行うこととし,学習者に対してパイロット調査アンケートを実施した。 次年度以降は,その調査を基に,項目の精選を行い,反応時間測定を実施する予定である。また,それらの調査結果を受けて,教授法の更なる検討と,測定方法の観点の検討に入る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初2011年度途中で出版予定となっていた,大和・田頭・磯田(in press)の査読が大幅に遅れ,論文の修正等に予想外の時間が掛かってしまい,その後のアンケート項目の検討・パイロット調査の実施等に関して十分な打ち合わせを重ねることができなかったため,(3)の自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
自己評価にある通り,当初計画よりもやや遅れているため,早急に語用論的能力の教授法と測定法の検討に入りたい。具体的には,測定法の一つとして検討している心理言語学的手法(反応時間の測定)を行うために,項目の精選,実施の準備を進める。その結果を基に,指導モデルの構築を行いたい。
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