2010~2011年は,福岡市内で小中の教員との協働的アクション・リサーチを実施したが,協働性を構築することの難しさに直面し,外国語教育における小中連携を推進するための最も現実的な方法は「中学1年生の入門期(最初の1学期)に,中学校教師がつながりを意識して,授業を行うこと」であるという結論に至った。そこで,2012年は,佐賀県吉野ヶ里町立三田川中学校の入門期の授業を録画・分析した。 同中学校の入門期(4月~7月)の授業に関して,観察・ビデオ・教材分析などの方法により得られたデータを分析した結果,「ゆるやかな移行」と「適度な段差」を意識した授業デザイン・運営が,生徒の英語力及び学習意欲の向上に大きく貢献することが明らかになった。 「ゆるやかな移行」の具体的実現方法は,(1)指導過程の共有,(2)学習活動・手法の共有,(3)言語材料の共有,(4)学習形態の共有,(5)英語を学ぶことを通して身に付けさせたい素地の共有であり,「適度な段差」の具体的実現方法は,(1)帯学習(基礎トレーニング活動)における「適度な段差」,(2)音読活動における「適度な段差」であった。 このような「ゆるやかな移行」と「適度な段差」を実現した実際の授業のやり取りを,研究成果報告書(全95頁)にまとめた。
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