当初の予定通り、前期後期の二回にわたり、対象群、実験群の学生それぞれ20名程度の発話を、13回程度の訓練の前後で録音し、それを書き起こした後、複雑さ、流暢さ、正確さの変化を測定した。その結果、前期においては大きなタスク効果(発話を引き出すために使用された質問が、学習者の発話に影響を与えること)が出てしまい、作動記憶効率化訓練の効果はタスクによる影響を取り除いたという想定のものとにしか結論づけることができなかった。一方、後期は作動記憶効率化訓練を行った学生の発話の変化を詳細に分析した。学生の構文的複雑さや長さが向上しても、流暢さ劣化することはなかったが、間違い数が増加した。つまり、複雑さと正確さのトレードオフ現象が観察された。また流暢さの伸びと、訓練当初の流暢さには負の相関関係がみられた。このことは、訓練開始時にすでに流暢に話せる学生は、作動記憶効率化訓練を行っても流暢さが伸びるわけではないことを示す。昨年度の結果から、極端に発話スピードが遅い学生には、このような訓練が有効であることがわかった。
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