研究課題/領域番号 |
22520573
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
内田 充美 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (70347475)
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研究分担者 |
山内 真理 千葉商科大学, 商経学部, 准教授 (40411863)
小島 篤博 大阪府立大学, 現代システム科学域, 准教授 (80291607)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 対照言語学 / 母語の干渉 / 学習者コーパス / 共通語としての英語 / 中間言語 |
研究概要 |
大学英語教育に課された使命のひとつである、英語作文能力育成のための指導をより効率的に行うために、本研究では、従来の英作文指導の方法では効果を上げることが難しい、習熟度の低い学習者の場合に的を絞って、克服すべき問題点を整理することに注意を傾けてきた。 授業内外の活動を通して、学習者の中間言語データ(作文)を収集し、独自の学習者コーパスを構築してきた。大阪府立大学の人文社会学系と千葉商科大学の商経学系の学生の作文を分析した結果、母語である日本語の統語的特徴が学習者の中間言語に影響し、その結果として、さまざまなエラーが引き起こされていることを明らかにした。日本語と英語の統語構造の違いのうち、特に影響が大きいと考えるのは次の3点である: (1) 「主語」の概念の違い (2) 既知情報を省略できる条件の違い (3) 述語(動詞、形容詞)がとる項構造の違い。 こういった対照言語学的知見に基づく分析結果を実際の指導に役立てるためには、学習者へのフィードバック方法はどうあるべきかを探るため、当年度は上記の2大学において授業を通した実践を行ってきた。その結果、学習者が求める指導方法について、アンケートなどを通して、一定の傾向をつかむことができた。 当研究のもうひとつの柱である、コーパス構築については、ブログや学習支援システムのバックアップデータから、効率的に資料を取り出すツール(Moox, Bloox)が完成した。より使いやすいGUIに発展させることが今後の課題である。 本年度は、上記の統語的分析、授業実践、ツール開発の研究成果について、学会報告を行った。研究過程で新たに浮上してきた課題は、指導の効果を測定するための基準の策定である。これは、本研究の当初からの課題である、母語話者をモデルとするのではない、共通語としての英語教育の目標点をどこにおくかという問題とも深く関わるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、新たな課題が出現してはいるが、おおむね、当初の予定どおり進行している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2013年度には、次の3点について、今年度と同様の研究チーム構成(内田、山内、小島)で、推進していく。 (1) 調査・分析:学習者のエラーを定量化する基準の策定を急ぐ。方向性としては、節(定形動詞)ごとに、致命的なエラーの有無で判断するといった、簡便な方法を目指していく。(内田、山内) (2) コーパス構築:BloggerやMoodleから作文データを取り出すためのツールをGUI化し、公開する。これに加えて、(1)の基準を策定したのち、収集した個々のデータを評価単位ごとに独立させるツールを開発する。また、評価を行うための作業用テンプレートをデータベースソフトウエアを用いて作成する。(小島、内田) (3) 授業実践:本年度に収集した、習熟度のやや高い理系学習者の作文データと、来年度新たに収集する見込みである、習熟度のやや高い文系学習者の資料を比較資料として、これまでの観察を検証する。(内田) 新たな資料の収集は続けるが、これまでの観察・分析結果をより精査し、一定の基準をもって定量化・数値化することを作業上の優先課題とする。習熟度の低い日本人大学生学習者が整った英文を書けるようになるためには、どのような支援が有効であるか、具体的な提案を行うことを目指す。成果をまとめて公開する。(全員)
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