研究課題/領域番号 |
22520579
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研究機関 | 北海道薬科大学 |
研究代表者 |
山田 惠 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (40326559)
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キーワード | 英語 / 書字認知 / 書字音韻変換方略 / 音節 / CV |
研究概要 |
平成23年度の研究では、書かれた英単語の音読で日本語母語話者が示す特徴を、英語母語話者との比較において検討した。英単語に含まれる音節は基本的に、Cを子音、Vを母音とするC_1VC_2で表される。C_1とC_2は時には重子音綴りの複数のCを含むことができ、Vも重母音綴りになりうるので、1音節英単語の綴りの長さは変わる。音節には更に左から右へC_1綴り-オンセット、V綴り-核、C_2綴り-コーダのGPCの対応と、VC_2綴り-韻の下位の書字音韻対応関係が同時に含まれる。このC_1VC_2の綴りを、日本語母語話者は、母語の音節の基本単位に相当するCVを用いて、英語の書字音韻対応関係とは異なった分節方法で、左から右へCV/Cのように変換する傾向を示す。また、このような分節方法では多くの読み間違いが予測されるにもかかわらず、単音節英単語の音読では英語母語話者と相似した正答率や反応傾向を示し、書字から音韻への処理のプロセスに、誤答へ導くCV/Cから正答のC/V/CやC/VCへと、分節方法を変えての再処理が行われていること、再処理には語彙記憶の要因である使用頻度が強く関っていること、また英語の習熟に伴うV綴りの認知における変化かかわっていることが示されている。 平成23年度の究では日本語母語話者の音読方法を更に見きわめる目的で、日本の学校教育用英語教材での使用頻度が特に高いC_1VC_2英単語を用い、英語母語話者との比較の下に検討したところ、両方の母語話者グループで共通する音読の特徴が示された。本研究の結果は、日本の学校英語教材で高頻度に使用される英単語、即ち英語母語話者の日常使用の英単語の音読においては、日本語母語話者も英語母語話者もほぼ同じような書字音韻変換方法を用いていることを示唆するものである。この方法とは、日本語母語話者でも既習の語彙記憶による変換に、英語母語話者ではRussel&Coltheart(2001)などで指摘されている二重回路(DRC)の語彙記憶に基づくwhole word単位での変換と呼ばれる方法に相当するものであろう。本研究からは、英語母語話者に対して従来とは異なった方法で調べると、語彙記憶によるwhole word変換には、日本語母語話者の場合と同様に、語頭のCVが最も強く影響した可能性が示された。語頭CVの異なる言語話者における認知について更に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
教育に関する日常的な業務と校務に関する業務を優先させているので、研究時間が十分に取れなかった。 実験参加者の学生との時間調整が十分にできず、実験開始に手間取った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は平成23年度に実施した上記(9.研究概要)以外の実験の結果を分析しまとめる。また、平成23年度研究の結果を受けて、英語母語話者との比較の下に、日本語母語話者の英単語および義単語の書字音韻変換方法を検討して行きたい。但し、英語母語話者を対象とした実験は、実施できるとしても平成24年度末になることが予想され、研究の遅延が予想される。平成25年度へ向けて、新たな科研研究の応募を考えている。
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