研究課題/領域番号 |
22520599
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
鷲見 朗子 京都ノートルダム女子大学, 人間文化学部, 教授 (20340466)
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研究分担者 |
鷲見 克典 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70242906)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 教育学 / 外国語 / アラビア語 / 教授法 / 学習理論 |
研究概要 |
学習者要因の調査においては、平成22年度および平成23年度に、日本の大学のアラビア語専攻と非専攻を含めたアラビア語科目受講生に対して実施した質問紙調査の結果を分析した。平成23年度までの分析では、主にアラブ文化への興味、スキル・知識などのコミュニケーション能力、アラビア語学習の難易感等の項目に焦点をおいてきたが、平成24年度の調査ではそれら項目に加えて、アラビア語学習への動機づけの視点から、アラビア語習得に対する志向(orientation)を中心に、先行するアラブ文化要素への興味及び影響を受けた結果変数の間の関係について調べた。こうした関係は、対象とした大学生による、アラビア語専攻、非アラビア語外国語専攻、非外国語専攻学生の3群間で比較された。分析結果として、対象者全般では、興味は単因子構造であり、12項目尺度とされた。多項目尺度はすべて単因子構造であり、興味を含め、適切な内的整合性を備えていた。また、3群の学生間の相違として、たとえば次のようなことが明らかとなった。(1) すべての群で、興味尺度はほとんどの志向尺度と関係が認められた、(2) 志向と主観的理解度、主観的成績、学習満足感、学習成果満足感、動機づけ強度、習得難易感との関係は、群によって違いが認められた。 指導理念の検証においては、ひきつづきコミュニカティブ・アプローチに関する文献と教材の収集および分析を行った。本年度は研究代表者がエジプトなどのアラブ諸国やアメリカなどに赴き、外国語としてアラビア語を教育する機関を訪問した。エジプトではカイロ・アメリカン大学アラビア語学習研究所、アメリカではインディアナ大学、ジョージタウン大学において授業を視察し、それぞれの機関のアラビア語教師と意見交換を行い、彼らからアラビア語ティーチングの方法論や使用テキストについての有益な見解や情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、学習者要因を調査するとともにアラビア語の指導理念コミュニカティブ・グラマーを推進することである。学習者要因を調べる質問紙調査の分析によって、学習者のやる気を引き出す要素として、アラブ文化への興味にくわえて、志向、学習満足感、理解度との相関関係がみられることが導き出された。その成果を学会等で少しずつ発表している。指導理念については、平成22年度~平成24年度の調査において、アラブ・欧米諸国で用いられているさまざまな授業法の観察をとおして、実際のティーチングにおける文法の位置づけや扱い方を確認できた。特にカイロ・アメリカン大学で開催されたアラビア語教育に関する学会の一環として行われた文法の教え方についてのワークショップで得た手法や知見は有用であったので、それらをコミュニカティブ・グラマーの理論と応用に結び付け、過去に収集した資料を活用しつつ、これまでの調査結果と検証している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の研究期間はあと1年間である。大きな課題としては、質問紙調査による学習者要因の分析結果と指導理念の検証結果とを総合的にすり合わせて考察していくことである。具体的には、質問紙調査で得られた学習者の意欲を高める要因と指導理念のなかで議論されているコミュニケーション能力がどのように関係するのかを理論と実践の両面から、より深く見ていかなければならないと考えている。質問紙調査ならびに指導理念の検証と平行して進めている授業分析調査の結果も考慮に入れながら、コミュニケーションのための文法に重きをおいたコミュニカティブ・グラマーの特色をとりいれた教材モデルも提示していきたい。本年度もこれまで同様、学会等で成果を発表し、ほかの専門家からフィードバックを得る予定である。そうするなかで、必要であれば、若干の軌道修正を行い、より高い成果を求めていく。
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