平成22年度は北海道内の公立A高校(普通科5クラス、理数科1クラス)の1年生227名およびB工業高専の1年生161名を被験者として、英語学習に対する動機づけおよび学習習慣に関する質問紙調査(46項目)を行なった。この予備調査で得られたデータに探索的因子分析を行った結果、4つの因子が抽出され、下位項目の中身を勘案してそれぞれ「肯定的自己」因子、「目的意識」因子、「WTC(Willingness To Communicate)」因子、「環境」因子と命名した。この結果は、23年度から3年間にわたり2校種間で実施する本調査で用いる質問項目の精選を行なう資料となるものである。各因子の内的整合性が.485~.792とやや低いことから、より精度の高い質問紙になるように質問項目の差し替えを行ない、本調査に使用することとした。研究協力校となる高校は、被験者に関わる変数を可能な限り少なくするため、学習塾等の進学資料からB工業高専の入学生と入学時の平均的学力がほぼ同等であると考えられる学校を選んだ。またこの学校には理数科も併設されていることから、高専生と高校生との間の差異だけでなく、共通する特徴も見いだせる可能性がある。抽出された4つの因子間の相関係数を見たところ、「WTC」因子と「目的意識」因子でr=.631とやや強い相関が見られ、次いで「目的意識」因子と「環境」因子(r=.438)、「肯定的自己」因子と「環境」因子(r=.304)となっている。高専と高校の校種間、そして普通科と理数系学科の学科間で因子ごとにt検定により平均値の差を見たところ、「WTC」因子においてどちらもp<.01の有意差で高校生、そして普通科の方で値が大きいことがわかった。このように、予備調査からも英語によるコミュニケーションに対する動機づけの差が高校生と高専生の間に存在する可能性がうかがえる。
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