研究概要 |
23年度は主に二つの点に絞って分析を行った。一つは、4名の多言語学習者(カナダ人1名、中国人2名、日本人1名)が日本語、英語、中国語の3言語で作成したL1,L2,L3のテキストを分析し、その特徴を明らかにした。特に、日本人言語学習者については2年間半にわって観察、インタビュー等も行い、このデータも分析した。これらの分析結果を二つの国際学会で発表したが、主な結果は(1)同じテキストの特徴(例、主張を理由によって支持するjustificationタイプの使用、introductionの書き方、パラグラフの構成)はどの言語のテキストにも共通して見られたが、一方、言語に特有な特徴も観察された,(2)テキストの特徴の選択には英語のライティング教育や経験が大きく関わっているが、個人的要因(態度、言語能力、ライティングの捉え方)および社会的要因(読み手、コンテキスト)の影響も大きい。二つ目の分析は、日本人多言語学習者4名から収集したthink-aloud-protocolsデータの分析である。フランス語、スペイン語、韓国語、英語、日本語によるライティングプロセスをマイクロレベルで分析するために、まず8つの分類カテゴリー(例、planning,rehearsing,word-or grammar-searching,repairing,evaluating)を特定し、被験者にインタビューしながらプロセスをカテゴリー化した。現在までの主な分析結果は、(1)どの多言語学習者も、L2またはL3で作文する時、母語であるL1を主に内容のプランニングや評価及びプロセスをコントロールする目的のために頻繁に使うが、(2)英語力の高い学習者の場合は英語(L2)をL3の作文に頻繁に使う傾向が見られた。結論として、書き手は、言語の違いに関わらず同じようなプロセスで書く傾向があるが、そのプロセスも、テキストの特徴の選択と同様に、書き手のL2,L3の言語能力と大いに関係していることが分かった。作文構築プロセスデータは更に精査する予定である。
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