研究概要 |
本研究の目的は小学校教員のもつ言語教師としての認知を解明することにより、小学校における外国語教育の改善に資することである。研究の1年目である本年度は、主としてアンケート調査とインタビューや自由討論によるデータの収集と分析を行った。 (1) アンケートによる調査 beliefを調べるための質問紙調査BALLIを実施し(N=98)、因子分析を行った結果6つの因子が抽出された(累積寄与率、69.2%)。「経験」が教師の認知にどのように影響を与えているのかを知るため、経験の違いによって教師をグルーピングし、グループ間の因子得点の平均値を比較した。その結果、教師の経験の違いによって有意差のある要因(「手本重視」「人間形成重視」「基礎重視」など)があることが示唆された。 一方、この質問紙調査の妥当性を調べるため主成分分析を行った結果、「技能・知識」「学習方法」といったBALLIの構成概念とは異なる成分が見られ、小学校教師を対象とした新たな質問紙を作成することの必要性が示唆された。 (2) インタビューによる調査 インタビューと自由討論(N=3)を実施し、データベース発想法(藤沢1992)によって分析を行った。その結果、外国語活動の実践に影響を及ぼしている特徴的な要因の幾つかが明確になり、先行研究(Lortie, 1975;他)で明らかになっている英語専門教師に見られるものとは異なった要因やBorg(2003)の「教師認知をめぐる枠組み」の中で説明されている教育実践に影響を与えていると考えられるContextual Factorsには見られない要素が抽出された(地域の影響、同僚との葛藤、学級作りの視点、未開発の教科であることの面白さなど)。 これらの結果はデータの数が少ないため現段階では一般化することはできないが、研究の初年度として次年度以降の研究の方向性を見極めるための貴重な示唆が得られた。
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