研究概要 |
本研究の目的は,小学校教師のもつ言語教師としての認知を解明し,小学校における英語教育の改善に資することである。研究2年目となる本年度は,前年度に得られたデータを再検討し,さらに大規模なデータの収集を行った。 研究課題の解決のために,質問紙による量的なデータと調査目的にあったサンプリングによる質的データを混合して用い,統計的な検証と記述データの考察を繰り返し行った。質問紙調査の分析には基本的に横断的研究方法を用い,被験者の様々な属性の違いによって教師を群化し,その群間の違いを統計的な手法で比較した。また、質的なデータはデータベース発想法(藤沢1992)などの手法により,コード化とそのカテゴリー間の関係を解釈することで理論の構築を図った。 本年度の具体的な成果は以下である。 (1)前年度に実施した質問紙による調査結果から,小学校教員め認知を構成している要因と教師の自律的成長に関わっていると思われる要因を抽出し,それらを測定するためのアンケート質問紙(230項目)を作成してパイロットスタディを実施した。 (2)同様に前年度の質的調査(インタビューと集団討議)から明らかになった教師の自律的成長の過程に関する情報から,教師の成長は一定の過程をたどるのではないかという仮定のもとに,それらをどのような尺度や代表値で測定するかを検討し,教師の自律的成長の尺度化を試みた。 (3)以上の情報をもとにパイロットスタデイの質問項目を精査し,教師の自律的実践の度合いを測定する項目を追加した本調査のための質問紙を構築した。 (4)これらの結果を補完し,指導経験が教師の認知に与える影響を探るため,外国語授業VTRを刺激素材としたグループ討議を実施し外国語活動経験者と未経験者g授業観の違いを探った。現在発言をすべて文字化して分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究計画において,1,2年目に計画していた量的・質的調査は順調に進展しており,小学校教師の言語教師としての認知を解明するという研究目的は順調に達成されつつある。しかしながら,研究の進展に伴って新たな研究課題(教師の自律的成長段階における認知の特徴)が生じ,これらの調査を継続して行うこととした。そのため,3年目に予定していた授業観察とその分析のための準備を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,構築した質問紙による本調査を実施しより多くのデータを収集し分析するとともに,教師の自律的成長の尺度化を試み,それぞれの成長段階における教師の認知の特徴を明らかにしていく。そのために,これまで構築してきた人的ネットワークやwebによるコミュニテイサイトを活用していく。また,グループ討議によるデータの収集も継続し,教師がおかれた環境が教師認知に与える影響も調査していきたい。 得られた結果から,小学校教師が自信をもって外国語活動に取り組むことを支援するための教飾教育の在り方について具体的な方策を提案していく。
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