本研究の目的は,小学校教師のもつ言語教師としての認知を解明し,小学校における外国語活動の改善に資することである。これまでの研究において,質問紙による量的なデータとインタビューや討論による質的データを収集し,混合研究法による分析と考察を行ってきた。研究の最終年度に当たる本年度の主たる成果は以下である 1.小学校外国語活動指導経験者と未経験者を対象に,ある小学校外国語活動の授業をビデオで視聴した後グループ討議を実施し,両グループの発話を質的に分析した。分析の結果から,授業を見る視点,解釈の仕方,コミュニケーション観などに興味深い違いが見られた。こうした研究を積み重ねることで得られる知見を,多様な教師経験をもつ教師を対象とする現職教師教育の具体的な改善策を検討する上で役立てていきたい。 2.小学校教師のもつpedagogical beliefを調べるため,外国語活動に関するビリーフと自己の教育実践に関するビリーフを調べる2種類の質問紙を作成した。また教師の個人差要因として,外国語学習動機,態度,学習者信条を調べる質問紙を作成した。個人差要因を独立変数,pedagogical beliefを従属変数とした重回帰分析により,例えば学習者として外国語学習動機の低い教師に英語指導能力を重視する傾向が見られるなど,幾つかの要因間の関係が示唆された。小学校教師の意識のレベルでの特徴を知るために,今後もこうした研究を積み重ねていきたいと考えている。 3.小学校教師の外国語活動実践の特徴を調べるため,これまでの研究で得た情報から18項目から成る質問紙を作成した。さらに授業実践に影響を与える要因として,小学校教師のもつ外国語学習者としての個人差要因,教師としての個人的要因,教師をとりまく教育環境を仮定し,同様に質問紙を作成し調査を実施した。これらの要因間の関係を明らかにすべく,現在結果を分析中である。
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