本研究の目的は、近年英語圏において「剽窃」および「他人の文章の借用」がどのようにとらえられているかを整理し、その理解に基づいて英文ライティング指導をどのように行うべきかについて理論的研究を行うことである。この目的に従って、平成24年度は、これまでに行った研究のまとめと発表を行う予定であった。 平成24年9月には、平成22年度に教員対象に行った質問紙による調査結果をJACET Convention 2012: The 51st International Conventionで発表した。この発表のテーマは、日本の大学教員たちが盗用をどのようにとらえ、どのように対処しているかと、適切な引用と盗用の境界線をどのように考えているかについてであった。なお、この研究の概要は、The JACET International Convention Proceedingsにまとめた(pp.359-362)。 さらに、平成25年の6月には、平成22年度から3年間にわたって行ってきた盗用問題についての理論的研究の内容を本として出版する予定である。本のタイトルは、『英文ライティングと引用の作法―盗用と言われないための英文指導』(仮題)であるが、その概要は、英語圏における盗用問題のとらえかた、英語圏におけるこれまでの研究のまとめ、盗用問題の本質の探究、さらに、これらの研究に基づいた日本の大学における英文指導のあり方の提案である。この本の中で、これまで日本ではあまり問題として認識されてこなかった盗用問題の重要性について注意を喚起し、日本における指導法を提案できたのではないかと自負している。
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