著者が昨年度行った実験では、目標語を単独で提示するよりも、学習者がすでに知っている語と結びつけて2語のコロケーションで提示するほうが、意味の保持と再生に効果があることを示した。しかしこの実験では、単独提示に使用した目標語と、コロケーション提示に使用した目標語が異なっていたため、目標語の質の違いが結果に影響を及ぼした可能性がある。 そこで今年度は、両者の提示方法で同じ目標語20語(英単語)を用いて実験を行った。参加者は各33名からなる2つのクラスに所属する大学1年生、計66名である。語彙サイズテストの結果、この2グループには有意差がなかった。すなわち同等の語彙知識を持つ2集団と仮定できる。グループ1には、未知の目標語(名詞)にすでに知っている語(形容詞もしくは名詞)をつけ、2語のコロケーションとしてその意味(日本語)を覚えてもらった。グループ2には、何もつけず、未知の目標語のみの意味(日本語)を覚えてもらった。その後、直後の意味再生テストを行い、グループ1にはコロケーションの意味を、グループ2には目標語単独の意味を書いてもらった。1週間後には同じテストをもう一度実施した。結果は、直後のテストでも1週間後のテストでも、グルーロブ1が2を得点で有意に上回った。また、グループ1のほうが、2つのテスト間における得点の減少率が有意に少なかった。 この結果は前年度の実験結果を支持している。すなわち、覚えるべき単語にすでに知っている単語を結びつけ、2語の『ロケーションとして覚えるほうが、単独で覚えるよりも意味の保持と再生に効果的であることを裏付けている。学習者の記憶にすでに貯蔵されている語が、新しい語の学習を助け、2語の結びつきが、忘却を防ぐ役割を果たしていると考えられる。今年度の成果は、新たな語彙学習方法の有効性をはっきり示したという点で価値あるものと考えらえる。
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