英語母語話者が子供の頃に聞いた物語を語ってもらい、それらを録音して作成した物語コーパスをほぼ完成し、『世界の英語話者が語る子供の頃によく聞いたお話』と題したサイトにまとめた。ここには、物語のページとその音声が収録され、コーパス分析のためのテキストファイルも掲載してある。さらに話者のバックグランドと物語のエピソードも参照できるようになっている。 さまざまな物語が、四英語圏(イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア/ニュージーランド)の、年代の違う話者に語られ、同じ物語が語られた例も少なくない。同じタイトルで語られた物語をアールネ & トンプソン (1981)やプロップ (1983)に基づいて分析した結果、大まかな物語の基本構造は共通であった。加えて、語りで用いられるレキシカルフレーズにも細かな差違はあるものの、物語の構造に関わる表現やフレーズ、例えば『三匹の子豚』の"I'll huff and I'll puff and I'll blow your house in"等は、その物語の特徴を示すものであり、語り手の所属する英語圏と年齢要因にはほとんど左右されていなかった。 一方、多くの話者が、子供の頃に聞いた物語を絵本等で繰り返し読んだ経験を持ち、例えばペローとグリムの『赤ずきん』のように、物語自体の内容が歴史的に変化したものについては、年齢要因に影響を受けている例も見られた。 学習教材として、語りや読み聞かせによって物語を活用することは、学習者がその物語に用いられている独特の言い回しに触れ、同じ表現を繰り返し聞き、語り手が作り上げる英語の音とリズムを楽しむ良い機会となるであろうことも明らかとなった。
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