研究概要 |
本研究の目的は,以下の三点である.第一の目標は,母語の影響を探るために,日本語と英語の背後にある認知的な捉え方の違いに基づく表現の違いを分析することである.第二の目標は,日英語の言語差が実際の英語学習者の発話にどのように影響を与えているのかについて調査・分析を行うことである.第三に,そういった学習者の表現上の傾向に基づき,英語学習者にとって望ましい相互行為的な対話の構造と言語表現を提案することである. 22年度の成果は,これらの三点の目標を達成するための基礎作りとして 1. 応用言語学,談話分析,認知言語学に関する文献・資料の収集・整理 (対話構造分析理論として,Carletta(1995)のDialogue Structure Coding Schemeを採用) 2. 日本人英語学習者(上級・中級)と日本語母語話者と英語母語話者のペアによる四種類のマルチモーダル音声対話データのビデオ録画と文字化作業 (各五組(計40人),約25時間分のデータを収録)を行ったことである。 日本人英語学習者の英語コミュニケーション能力を向上させるためには,文法表現のみならず会話構造を学習者に提示し,教授することが必要である.しかし,利用可能な英語学習者の音声対話データベースも教育目的の研究もまだ十分ではない.情報交換を必要とする協調的な活動が求められる場において,参与者がどのように問題を解決するか,どのような戦略を取るか,また,どのような言語表現を用いるのかを実際の言語使用に基づき記述することは,教育場面や教材作成などの実践で役立ち,大きな意義を持つ.
|