研究概要 |
本研究の目的は,作成した音声対話データベースを使用して,(1)日本語と英語の背後にある認知的な捉え方の違いに基づく表現の違いを分析すること,(2)母語の影響を探るために,日英語の言語差が実際の英語学習者の発話にどのように影響を与えているのかについて調査・分析を行うこと,(3)そういった学習者の表現上の傾向に基づき,英語学習者にとって望ましい相互行為的な対話の構造と言語表現を提案することである. 23年度の成果として,日英語の比較を扱う上記の(1)に関しては,文法レベルでは主格,目的格の出現の傾向が日英語で違っていたが,談話レベルではtopic comment structureなど,予想以上に似通った構想がみられることが明らかになったことが挙げられる.また,学習者の言語を対象とする(2)に関しては,日本語,英語,学習者の英語において,それぞれ異なる表現や構造の使用が明らかになった.従って,学習者が中間言語的な発達を示していることが示唆された. 対話において,参与者間がどのように知識を共有するのか,そのためにどのような言語表現が使用するのかは,英語教育の分野であまり注目されてこなかった.しかし,学習者の英語コミュニケーション能力育成には,このような対話の側面を,教育場面や教材作成などの実践で役立つように整理していくことが欠かせず,本調査の結果は,教育の現場に還元できるだけでなく,教育の質を高める上でも重要であると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対話構造を記述するために使用しているコーディングスキーマ(Carletta (1995)のDialogue Structure Coding Scheme)は,母語話者の対話構造分析のために作成されており,学習者の英語に対応しないことがあるため,少し工夫を要するが,おおむね順調である。
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