2010年度は、これまでに実施してきた多読活動を振り返る意味で、「多読マラソン」4年間(2007年度~2010年度)のデータを分析した。2007年後期からは、図書館に「リーディングラウンジ」を開設して、学生の"本へのアクセズ"の確保にも努めてきた。教員(当研究者)が授業などで直接働きかけた学生はそれなりに読んだが、担当以外の学生を巻き込むことは難しかった。また、参加させにくい学年があることもわかった。とはいえ、自発的にエントリーする学生やリピーターも少なからず現れ始めたので、学生は一度多読の方法に親しめばその後も読み続ける可能性が高いことも示唆された。多読活動をさらに拡充するには他の教員のサポートが必須であるが、周りの理解と協力をいかに得ていくかも今後の課題となる。 一方、日記研究の準備段階として、1年生クラスを対象に多読日記をつけさせてみた。ある程度形式の決まったもの(A4用紙1枚)を用意し、毎週宿題として配布して提出させたが、説明が不十分だったのか、思うようなデータが集まらなかった。来年度は目的と方法を明確にするなど改善策を講じる必要がある。学生からより多くの情報を得るためには、教師が毎回何らかのフィードバック(コメント、励まし、アドバイス、回答など)をすることが求められるだろう。今回は用紙を回収するだけに留めたので、学生も一方通行の課題にあまり意義を見出さなかったようである。 学生の学習面での変化を見るためのテストは現在作成中である。文学関連の内容把握問題、コロケーション関連問題、論旨並べ替え問題などを検討している。情意面での変化を探るためには、来年度学期初めにリーディング不安とリーディングストラテジーの質問紙調査を計画している。多読に関する意識調査も含めたいと思うので、関連の文献で適切な質問を探しているところである。
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