学習日記は、言語学習の隠れた側面を発見する手法として有効であると考えられており、これまでにも動機づけ、不安感、文化的感受性、学習目標、達成感、コミュニケーションをとろうとする意欲などが、日記を通して明らかにされてきた。2012年度は、この3年間で集めた日記データの分析にあたった。 まず、2010年度後期に課した多読日記から何が汲み取れるのかを探った。この時は日記に対してコメントやフィードバックを加えず、毎週A4の紙に書かせたものを回収するだけであった。クラス全体として見ると取れたデータは決して多くはなかったのだが、毎回欠かさず日記を提出した学生2名の日記を分析したところ、学生が多読を通して様々なリーディング方略を試していたことがわかった。また、個人差が見受けられたことから、彼らの学習スタイルがリーディング方略使用に影響を与えている可能性も明らかになった。 また、2012年度に実施した冊子形式の学習日記を研究材料に、大学1年生の多読への関心や学習目標(オリエンテーション)のタイプや変化を探った。今回は、教員がコメントを書いて返すことで、何か影響が見られるのかどうかも観察した。日記研究は一般化が難しいと言われているが、1年生46名分の学習日記を分析することで、大学1年生に特徴的な傾向を見出すことができるかを観察した。その結果、多読に関しては、入学時にその意義を説くことで学生にある程度のインパクトを与えることはできるが、その関心を学期中に渡って維持させ多読活動に関わらせることは容易ではないことがわかった。 2011年度に実施した「語彙(コロケーション)テスト、意味類推・要約・空所補充テスト、長文読解テスト(随筆)」に関しては、学期前と後の比較でコロケーションと読解テストにスコアの向上が見られたが、残念ながら統計的に有意な差は認められなかった。
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