本研究の目的は、メタ認知ストラテジーが、大学生の英語のリスニング力とリーディング力に与える影響について探ることである。いまだに全貌が明らかにされていないメタ認知ストラテジーの働きを明確にすることによって、英語を苦手とする大学生を「よい学習者」に育てる育成プランを提案することができると考える。 平成22年度、大学1年生92名を対象に予備調査を行った。実験群と統制群を設け、英語リスニング・リーディングの授業内・授業外の活動を準備した。両群には、同じ量と質のインプットを与えたが、実験群のみに、メタ認知ストラテジー育成プランを実施した。この育成プランは、毎回の授業外活動の後で、メタ認知ストラテジーの調査票に記入させていくものである。このことにより、実験群の研究参加者は自分自身の学習過程に注目し、英語活動における自己内省力を育てていくことが期待された。週1回の授業の中では、精読・精聴・リーディングスキル・リスニングスキルを伸ばす訓練を行い、授業外では、コンピュータを使った多読・多聴活動をさせた。 プリテストとポストテストの結果を分析したところ、両群ともに、リーディング能力の向上が見られたが、リスニング能力での向上はなかった。実験群と統制群との間の有意な差は見られなかった。つまり、実験群対象に行われたメタ認知ストラテジーの育成プランの効力はなかったことになる。この結果は、メタ認知ストラテジー育成プランに質問票のみを用いたことや、予備調査期間にリスニングとリーディング共にインプットを増やしたことで研究参加者の負担を大きくしてしまったことなどが考えられる。本調査には、育成プランの改良や研究手順の若干の変更を計画している。
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