研究概要 |
本研究は、(1)主に高等専門学校を中心にした英語授業(特に英語表現活動時)において、学生らが必要としている教室内での学習者同士の「関わり方」(人間関係)を探り、その実態を把握する。その後、(2)英語授業時の教室内での学習者間の人間関係を測定する尺度を検証する。その後(3)教室内の人間関係を築くのに有効とされる諸活動等を基盤とし、英語授業としても効果的な授業内での英語表現活動を試行・検討し、それらの表現活動が教室内での学習者同士の人間関係に及ぼす影響について調べることを目的とする。初年度は、主に日本カウンセリング学会が主催する研修に参加するなど、学生の心理面への介入方法や評価方法の情報収集活動を主に行った。教室内での学生の友人、学習、教師、学級、進路に関する様子と、クラス内での承認度や被侵害度に加え、個人のソーシャルスキル(「配慮」と「関わり」)の測定ができる、hyper-QU(河村茂雄著)を採用し、学生らの心の状態の把握を試みた。A工業高等専門学校(A高専)のX学年(209名)を対象にhyper-QUを実施した。同時に、同参加者の英語力をTOEIC-IP、各参加者の履修クラス(3種類:Reading,Grammar,Communication)の英語成績との比較を行った。結果、Grammarの成績下位の学習者と「承認得点」(r=.31)、Communicationの成績下位の学習者と「関わり」(r=.34)の間に、どちらも1%水準で有意な相関が認められた。5%水準で有意な差が認められたのは、Grammarの成績下位の学生と「学級」(r=.26)、「関わり」(r=.30)との間であった。Communicationの授業では、学級での友人関係や他人と関わるスキルが必要となってくると推測できるが、Communicationの成績が下位の学生と「関わり」のスキルに相関があったのは、「人と関わりあうことが得意である」と思っている参加者は、よりCommunicationの授業の成績が低いことを意味し、予想外の結果であった。今後、より深い授業内容や評価方法の分析も必要である。また、学習者同士の人間関係と英語能力をより複数の視点から観察し分析していく予定である。
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