研究課題/領域番号 |
22520644
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
朴 宣美 筑波大学, 人文社会系, 講師 (80455914)
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キーワード | 相互認識 / キーセン観光 / 買春観光 / 日本女性運動 / 韓国女性運動 |
研究概要 |
本研究は、日韓女性の交流・相互認識の歴史を1960年代後半から70年代までを中心に分析するものである。特に、新しい相互認識やアジア認識を打ち出し、それに基づいて日韓交流を行った女性たちの文章や、関連女性団体の機関誌・資料等を分析し、また彼女たちへの聞き取り調査を行い、彼女たちの思想や行動を明らかにする。研究成果は、(1)70年代に日韓女性たちの新しい相互認識によって行われたキーセン観光反対運動について詳しく分析した。(2)日本側で運動を行った団体(キーセン観光に反対する女たちの会、日本キリスト教協議会、日本キリスト教矯風会、売春問題ととりくむ会)や、韓国側で運動を行った団体(韓国教会女性連合会、梨花女子大学校学生会)の資料を分析し、運動の経緯を明らかにした。(3)キーセン観光反対運動を行った日韓女性の相互認識について分析した。「呼びかけ」・「応答」の意識、「連帯意識」について、具体的な人物(金允玉、山口明子、高橋喜久江、松井やより)を取り上げながら分析した。(4)戦後初めての日韓女性による連帯運動であったキーセン観光反対運動の意義を明らかにした。日韓女性の交流・相互認識の歴史は、戦前(植民地期)、解放後・戦後への転換・断絶期(日本の敗戦から1965年韓日条約まで)、新たな関係・認識の模索期(60年代後半から70年代)、女性学的知または経験の交流期(80年代)、「旧日本軍慰安婦問題」解決のための連帯期(90年代以降)として時期区分できる。今回の研究は、戦前から戦後へと、その意識の転換期にあたる70年代の研究として、日韓女性運動の新たな可能性を切り開いた、キーセン観光反対運動やそこで現れた日韓女性の相互認識を分析するその意義をあきらかにした。(5)前年度に聞き取り調査を行った人物への追加調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)70年代に新しい相互認識やアジア認識によって行われた日韓女性たちの連帯的な女性運動(キーセン観光反対運動)について詳しく調査・分析できた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)1960年代後半から70年代にかけて登場した日本女性たちの新しいアジア認識や女性運動が、70年代後半の主流の女性運動の中で継承されず、衰退していくその経緯について具体的に分析する。 (2)五島昌子(アジアの女たちの会)、吉武輝子(国際婦人年をきっかけとして行動を起こす女たちの会)への聞き取り調査を行う。
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