研究課題/領域番号 |
22520651
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
東山 京子 中京大学, 社会科学研究所, 特任研究員 (80570077)
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キーワード | 台湾総督府文書 / 史料学 / アーカイブズ学 / 公文書 / 台湾史料 |
研究概要 |
本研究は、近代日本の外地統治史料のなかで、現存する稀少で豊富な価値を持つ歴史資料である台湾総督府文書を近代公文書学的視点からその構想を明らかにしようとするものである。現在、台湾南投市中興新村にある国史館台湾文献館が所蔵しているこの台湾総督府文書は、日本の外地統治機関である台湾総督府の行政文書で、日本植民地研究にとって最も貴重な基礎的史料であるとともに、日本の行政機関が近代行政文書の何を保存し、何を廃棄したのか、またどのように保存してきたのかを知ることができる、最も重要な公文書史料でもある。このため、本研究は、日本における近代公文書の史料論を構築するための手がかりとして、台湾総督府文書の文書構造を解明することを目的としている。 この台湾総督府文書の構造を解き明かす手立てとして、1.本府における階層を明らかにし、組織機構上の文書のあり方を分析すること、2.台湾総督府文書には、附属機関・下部機関・関係機関の文書が残されていることから、各機関における文書管理について明らかにすること、3.台湾総督府の文書保存規則では、永久保存・15年保存・5年保存・1年保存に分類されているが、これまでの研究において有期保存文書である15年保存が廃棄された形跡がないことから、文書保存規則により定められた法制度上と文書の残され方でみることができる実態運用を比較検討すること、4.敗戦という歴史的偶然性から本来残ることのない5年保存と1年保存の実態を把握することによって、文書の取扱と運用とを具体的に明らかにすること、の4点を軸にして解析することとした。 そのため、1年目は、国内と台湾において史料収集を行い、公文書の保存・管理・運用の立場から大正12年における皇太子の台湾行啓関係文書と敗戦後の台南州の文書について史料学的分析を行い、社会科学研究所の紀要において発表し、2年目は、政策決定における台湾総督府技師の役割を、編纂物である『殖産部報』と台湾総督府文書の中に綴られている復命書から分析し、社会科学研究所の紀要において発表し、龍淫書舎・2011年刊行の「殖産部史料」の解題を執筆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
台湾の各公的機関や個人所蔵文書の調査を行い、新しい史料を発掘し、それを通じて、公文書の管理制度が、戦前においては、上部から地方の末端機関までシステム化されていたことを解明する糸口をつかむことができたこと。さらに、公文書の管理制度と実態運用との違いを解明する方向性を引き出すことができたこと。
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今後の研究の推進方策 |
2年間の台湾における史資料調査により、これまで、明らかになっていなかった台湾総督府関係の文書や日本統治関連の史資料がいまもなお、台湾各地に知られずに現存していることがわかった。それは、地方機関である台南州の文書であり、附属組織の后里国民小学の学校文書であり、下部組織の鶯歌庄の村文書である。そして、台湾行啓記念事業として数々のもの史料が台湾全土に保存されていることがわかった。 今後、さらに、調査および収集対象を広げて、これまでの研究を発展させていく。
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