本研究は、近代統治史料のなかで本府・法院・監獄・軍隊・専売・企業・地方州庁(街庄)・評議会などのあらゆる機関を持った小政府組織として存在していた台湾の統治機関である台湾総督府の行政文書を対象としたものである。現存する台湾総督府文書は、文書課において管理される過程で、行政的に体系的に保存された文書群と、編綴される前または廃棄される前に接収された現用のままの文書群とで構成されていることから、当該文書はこの二つの異なる文書群が保存された、通常の文書管理制度では類を見ない文書形態が残されている。このように本研究では、日本の近代を担ってきた行政組織の文書であり、現存する希少で豊富な価値を持つ歴史資料である台湾総督府文書を、近代公文書学的視点からその構造を明らかにしようとするものである。
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