昨年度まで、一関市立芦東山記念館所蔵史料と東山の生家および分家に伝わる史料の調査・整理と目録作成を進めてきた。それを踏まえ、芦東山の生涯と関係史料の伝来・構成について研究、執筆し、芦東山記念館所蔵史料目録を付して、東北大学大学院文学研究科が平成24年3月に発行した『東北文化研究室紀要』第53集に掲載した。芦東山記念館では所蔵史料を閲覧利用に供しているが、それを周知するために史料目録を同館のホームページでも公開する準備を進めている。 史料の調査・整理と並行して重要史料のデジタルカメラによる撮影と筆耕も行ってきたが、本年度は最終年度であるので東北大学大学院文学研究科日本史専攻の学生2名を雇用して筆耕作業に力を入れ、それを大藤が原史料と照合して校正し、そのデータをパソコンに入力しておいて、将来における芦東山記念館での史料集の発行に備えた。 芦東山は、我が国における近代的な刑法論書の嚆矢と評価されている『無刑録』を執筆したことで、法曹界では明治期より知られた人物であるが、研究が進んでいないこともあって一般的な知名度は低い。そこで、関係史料の調査・整理と研究の成果を社会に還元するために、平成24年6月に市民会員の多い仙台郷土研究会の講演会で「仙台藩儒学者芦東山関係史料の伝来と記念館所蔵史料群の構成」と題して講演し、それを文章化して平成24年12月発行の『仙台郷土研究』第285号に掲載した。また、日本歴史学会誌『日本歴史』第776号(平成25年正月発行)の新年特集号「日本史のなかの長寿」に依頼されて執筆した「老いていかに生きるか」という論文でも、芦東山の生き方と思想について論じた。
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