研究課題/領域番号 |
22520657
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
末柄 豊 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (70251478)
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キーワード | 日本中世史 / 史料論 / 書状 / 仮名消息 / 花頂門跡 / 室町幕府と朝廷 / 一条冬良消息 / 三条西実隆 |
研究概要 |
本研究は、多様な中世文書の中にあって、史料として利用することが相対的に困難な書状および仮名消息について、史料として活用するための基盤を形成することを目的とする。具体的には、禁裏(天皇家)・三条西家・山科家および興福寺などの旧蔵にかかる室町時代中後期の書状を主要な素材として、(1)文書群・史料群への注目、(2)特定の人物の書状への注目という両様のアプローチにより、その方法論を鍛えると同時に、史料としての可能性を示すものである。2年目である2011年度は、以下のような研究をおこなった。 I東京大学史料編纂所所蔵実隆公記の原本について、紙背文書の差出人の署名・花押の集成作業をすすめた(未了)。 II禁裏文書や三条西家旧蔵の書状・消息類の読解・分析をすすめ、寺門派の脇門跡花頂門跡に関する実態の解明をはたして論文「花頂門跡再考」にまとめた。 III禁裏文書や三条西家旧蔵の書状・消息類の読解・分析をすすめ、室町時代における天皇と室町殿との関係のありようを検討し、学会報告を行うとともに、論文「禁裏文書にみる室町幕府と朝廷」にまとめた。 IV宮内庁書陵部所蔵桂宮本『一条冬良消息』などの読解分析をすすめ、土佐一条家の候人であった中御門家の系譜を追究して論文「土佐一条家祗候の中御門家の系譜をめぐって」にまとめた。 V主に東京大学史料編纂所架蔵の複本類によって、甘露寺親長や三条西実隆の書状の収集につとめた。 VI勧修寺・大覚寺・鹿王院等に出張し、中世史料の調査をすすめ、その一部について史料紹介をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
書状・仮名消息を史料として活用した研究論文を複数発表し、書状・仮名消息の史料としての可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
書状・仮名消息の史料としての可能性を提示する点には一定の成果をあげたので、より多くの研究者にその活用を促すための基盤の形成という点に重点を置きたい。具体的には、仮名消息読解のための自習教材の作成公開をすすめたい。さらに、2012年度は最終年度になるので、報告書をまとめ、書状を史料として活用するために有用なツールや翻刻などを公表したい。
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