モーリス・クーラン偏『パリ国立図書館所蔵漢籍解題目録』およびアンリ・コルディエ編『17~18世紀に中国において西洋人によって出版された西書漢訳解題目録』と研究代表者が既に作成した目録との対照を行い、全体で75%の完成度であるが、新たな範疇別目録を作成した。 平成22年6月には、パリ国立図書館蔵『酒飯論絵巻』に描かれた食物に関する国際研究会(パリ)で「描かれた食物と米」に関する発表を行い、同時に写本室で、中国で出版された『天主降生出像経解』(chinois 6750~6756)を中心に調査を行った。平成22年11月にも写本室で、南懐仁(Ferdinand Verbiest)が記した『坤與全圖』(chinois 1915)、『坤與圖説』(chinois 1526)、クーラン目録に『坤與全圖』と記されるchinois 1923Aおよび1923Bなどの比較研究を行う。この結果、『坤與圖説』の出版年代の疑問、chinois 1923Aは地図上に『坤與圖説』の説明が文章で記されるのみでchinois 1923BはAと同文だが下に小さく地図が描かれていることや高橋景保がオランダ船船長であるJ.W. de Sturlerへの献辞があり、文政九年四月となっていることから、日本での写本である事実が解明された。そして、平成23年3月には、名古屋大学および西尾市岩瀬文庫において、国際シンポジウム「日本研究における内外の視点」(3月4日~6日)を主催し、研究課題である「東アジア全体に共通する文化交流の軌跡と西欧との関わり」を中心に討議した。研究代表者は、「フランス国立図書館写本室蔵『天主降生出像経解』とジェローム・ナダル作絵入り福音書について」と「海外所蔵の『酒飯論絵巻』について-フランス国立図書館蔵本を中心に-」の二つの研究発表を行った。以上のような研究からその研究成果として、宣教師がもたらした様々な技術の日本への波及効果やその文化や思想の受容過程が解明されつつあり、今後の研究進展に期待の持てる結果となっている。また、関係した研究論文を2本発表した。
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