研究課題/領域番号 |
22520664
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
池内 敏 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90240861)
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キーワード | 近世 / 日朝 / 外交文書 / 対外関係 / 以酊庵 / 対馬藩 |
研究概要 |
近世初頭から幕末に到る日朝外交文書を管轄した機構=以酊庵輪番制について集中的に史料調査と分析を行った。とくに、(1)以酊庵輪番制と東向寺輪番制との制度的な関係、および(2)安永~天明年間における以酊庵輪番制廃止議論の分析に焦点を絞った。そこで、韓国国史編纂委員会および長崎県立対馬歴史民俗資料館において、(1)に関わって、前年度から継続的に収集を続けてきた「以酊庵雑録」(東福寺文書。朝鮮総督府時代に採録された筆写本)の内容分析を行うことを通じて、以酊庵輪番僧の一代記的な叙述に深みをもたせるとともに、とりわけて安永~天明年間における以酊庵輪番制廃止議論に関わる史料の調査を行い、湛堂令椿から梅荘顕常に到る三代の以酊庵輪番僧の動向を具体的に追究するとともに、密書扱いとされていた京都五山から江戸幕府に宛てられた以酊庵輪番制廃止要求書を発掘し、当該論議の内容を具体的で豊かなものにした。また、(2)については、前年度に収集した対馬藩宗家史料のうち東向寺僧の任免、活動記録に関わるものの包括的な分析を行うとともに、国立国会図書館所蔵の『両国往復書謄』(東向寺僧が管掌した日朝外交文書集)全冊を概観する作業とを併行させることで、これまで具体的には解明されてこなかった東向寺輪番制について概括的ながら見通しを示すことができた。これらについては、口頭発表および学術誌掲載論文として研究成果をとりまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近世初頭から幕末に到る日朝外交文書全体にわたる子細な検討はまだ果たせてはいないものの、そうした外交文書を管掌した機構(以酊庵輪番制と東向寺輪番制)についての具体的な分析が進展し、今後、当該研究を深める上での新たな論点を見出すことになった。この点で、研究は概ね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
とにかくにも、近世初頭から幕末に到る日朝外交文書全体を概観することとともに、これまでの本研究によって得られた新たな論点=以酊庵輪番制や東向寺輪番制など外交文書管掌機構のさらに具体的な分析と、外交折衝における言語(あるいは通訳)の役割について少し見通しを得たい。
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