研究課題/領域番号 |
22520666
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平 雅行 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10171399)
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キーワード | 出家入道 / 遁世 / 知行国主 / 関東申次 / 御家人 / 守護 / 地頭 / 評定衆 |
研究概要 |
今年度は朝廷・幕府の出家事例をできるだけ収集し、それをもとに下記のような、包括的な見通しを得た。 1中世においても、出家入道は大臣・納言・蔵人・検非違使など、古代から存続している朝廷官職に就くことはない。ただし出家入道の知行国主が存したし、関東申次にも出家入道が就任している。地方では国司の出家入道は存在しないが、太宰少弐・留守所・目代・下司・公文・郡司・惣追捕使・在国司の出家入道が確認できる。 2鎌倉・室町幕府では出家入道の将軍はいない。室町幕府の管領は出家入道が多いが、鎌倉幕府では出家入道の執権はいない。したがって鎌倉幕府の正式な発給文書である関東下知状や関東御教書には基本的に出家入道が署判することがない。また六波羅探題・鎮西探題にも出家入道がいない。 3幕府奉行人レベルでは出家入道は数多い。出家入道の評定衆や東使は膨大に存在するし、政所執事・問注所執事・引付頭人のほか、鎮西奉行・六波羅奉行人にも出家入道がいる。また、将軍家政所や得宗公文所にも出家入道がいる。守護・守護代・守護使、地頭・地頭代、御家人には膨大な数の出家入道がいる。 『新体系日本史15宗教社会史』所収の論文「中世宗教の成立と社会」において、以上の研究成果についてその概要を紹介し、出家入道が中世宗教の重要な特色であることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料の収集は順調に進んでおり、研究成果も適宜発表している。ただし出家入道のデータが予想以上に膨大であるため、その整理と詳細な分析にやや時間を要している。とはいえ、これは嬉しい悲鳴というべきであり、研究を進める上での手応えを十分に感じている。
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今後の研究の推進方策 |
史料収集を通じて、最大の課題である出家入道の歴史的成立過程の解明に大きな手応えを感じている。今後は当初からの計画通り、史料の整理・検討に力点を置きたい。この作業を通じて、院政期における神仏習合の進展や、本覚思想の登場との連関を探って行きたい。 作業量の多さからして、出家入道と女性の問題については、予定通り、概括的見通しに止める。また、出家入道を契機とする禁忌の変化については、それを確証できる史料がほとんどなく、また個人的な偏差も大きいと思われるため、この課題についてはペンディングとしたい。
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