研究概要 |
中世日本沿岸地域の開発に関する史料をもとに、開発という営為を通し、土木技術・農業生産・土地支配にとどまらない、地域における経済活動との関連、そこに起因する支配関係の実態を追究し、広域的な視野から当該期社会の成り立ちを検証するために、『平安遺文』・『鎌倉遺文』・『大日本史料』他の史料集などから関係史料を収集・整理し、調査・分析を行なう,うえでの基本となる編年目録作成に向けての作業を行なった。上記史料集のうち、14世紀中期までの史料については概ね抽出を終えることができた。また、国立国会図書館東京本館・内閣文庫において関係史料・資料(含港湾土木・技術関連)の収集・調査を行なった。その他、近年、発掘調査が行なわれた中世阿波国の川湊である川西遺跡についての研究報告(於徳島県埋蔵文化財センター)聴講や近世干拓に関する横浜市歴史博物館の特別展見学を通し、護岸や新田開発など研究課題を考えるうえでの重要な項目に関わる知見を深めるとともに、中世史料から開発対象地とされたことが確認でき、近世以降にわたって断続的に干拓をはじめとする沿岸部開発がなされた地域として長崎県・佐賀県域、諌早湾・有明海沿岸部に着目し、開発にかかる史跡・景観調査を実施した。研究成果の一部を拙稿「中世三国湊の通航税をめぐる相論とその背景」・「文献から見た境界としての熊野・土佐」「中世の太平洋海運について」中に記し、年度内に入稿済である(編著のため編集・印刷上諸般の事情により年度内刊行予定であったのが報告書作成段階では未刊)。
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