前年度からの調査を継続し、中世日本沿岸地域の開発に関する史料をもとに、開発という営為を通し、土木技術・農業生産・土地支配にとどまらない、地域における経済活動との関連、そこに起因する支配関係の実態を追究し、広域的な視野から当該期社会の成り立ちを検証するために『平安遺文』・『鎌倉遺文』・『大日本史料』他から関係史料を収集・整理し、調査・分析を行なううえでの基本となる編年目録作成のデータ収集を主に作業を行なった。15世紀までの史料(既刊史料集としての管見分)については概ね抽出を終えた。国立国会図書館・松阪市立文化財センターにおいて関係史料・資料(含港湾土木・技術関連)の収集・調査を行なったのをはじめ、宇治市歴史資料館・堺市立博物館・和歌山県立博物館等で課題に関連する特別展・企画展の見学を行ない、研究課題を考えるうえでの重要な項目に関わる知見を深めた。また、現地調査としては、安芸国沿岸部の開発の状況を検討するため広島県呉市から広島市にかけてフィールドワークを行なった。研究成果のの部として「文献から見た境界としての熊野・土佐」(竹田和夫編『古代・中世の境界意識と文化交流』勉誠出版、2011年)を発表し、「情報発信と合意の形成-中世の情報伝達と周知をめぐって-」(松原弘宣編『日本の情報伝達』創風社出版)「中世奥羽の港町」(平川新・千葉正樹編『講座 東北の歴史』清文堂出版)を執筆し入稿済である(編著のため編集・印刷上諸般の事情により未刊)。
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