前年度からの調査を継続し、中世日本沿岸地域の開発い関する史料をもとに、開発という営為を通し、輸送や漁撈など水上交通の拠点としての意義に留意しながら地域における経済活動との関連、そこに起因する支配関係の実態を探り、広域的な視野から当該期社会の成り立ちを検証するために『大日本史料』や自治体史などから関連史料を収集整理し、編年目録作成のためのデータ収集を行なうとともに、国立国会図書館・神奈川県立歴史博物館・広島市郷土資料館などにおいて干拓や港湾土木技術に関する内容を主に史・資料収集・調査を行なった。前々年度からの収集・調査分と併せ、分量が多く、その整理は継続中であり、史料目録としての精度を高めることを期し作業を続けている。 また、研究課題に関連する考古学と中世史シンポジウム「水の中世」(7月17・18日、於帝京大学山梨文化財研究所)、「中世渥美・常滑焼をおって」(11月9・10日、於常滑市民文化会館)、四国中世史研究会(12月22・23日、於村上水軍博物館)などに参加し、研究報告や沿岸・島嶼部の史跡巡見を通して知見を深め、付随的にフィールドワークを行なった。研究成果の一部は、後掲の公開講演「中世沿岸部の開発について‐港湾修築と新開‐」(於東北大学国史談話会大会)、口頭報告「中世沿岸部の開発について ‐阿波国津田島とその周辺‐」(於中世都市流通史懇話会)で発表し、「日本中世の湊津支配をめぐって‐修築と管理を主に‐」(於関西比較中世都市研究会、2013年5月31日開催予定)を準備している。論稿としては「中世海運と遠隔地間商業」(中西聡編『日本経済の歴史 -列島経済史入門-』(名古屋大学出版会、2013年5月刊行予定、第二章)他を執筆した。研究課題と関連する内容を含む藤本頼人『中世の河海と地域社会』書評も執筆中である。(5月7日『史学雑誌』投稿、掲載決定済)
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