戦国・江戸時代のドラマで武士・領主層が民を思い政治をしたと描かれることがある。かかるイメージの政治意識と福祉観念について、領主側の立場と地域社会の領民の立場を関連させ分析した。確かに、民を大事する意識は、戦国期にはみられた。しかしそれは、合戦・戦争を行うのに必要な物資や人員を提供する民の疲弊が武家領主層(大名)自身を窮地に追い込むからであり、その限りで民の保護・救済、いわば福祉であった。江戸時代の福祉の考え方はその延長にあり、実施は地域社会の役人層に委ねられた。但し領主への諸役や社会的な役割を果たしていることが、救済・福祉の対象となる前提で、それに外れる者への差別観念も生じた。
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