中国・韓国・日本の大蔵経に関係する史料を、調査報告書・展示図録・学術刊行物から探査した。同時に、「一切経年表-十二世紀末まで-」の第二層構築に着手し、収集史料の整理を行った。本研究の終了時点における報告書に盛り込むべく、精度の高いデータ整理の試みを継続している。 大蔵経をとりまく日本中世の仏教史文献の拡がりを捉える研究を進めた。その方法の一つとして、一寺院伝来の史料の全体像を把握する試みとして、愛知県豊橋市の普門寺を集中的に調査した。中世の仏教文献(聖教)のほか、近世に書写された中世文献など、あらたな史料を見出し、今後の研究の足がかりを築いた。調査については継続中である。新出文献の紹介や、それを素材にした研究論文については、本研究の終了までの継続課題とする。 論文「寂照入宋と摂関期仏教の転換」、著書所収「尊勝陀羅尼の受容とその転回」「造塔法と平安京」「入唐求法僧と入宋巡礼僧」を執筆し、本研究に関係する個別の課題についての考察を進めた。また論文「河音能平著『中世封建制成立史論』の批判的継承」を執筆して、研究を集成する上での視点を明確にした。これらの論文のほか、以前に執筆した論文等を合わせ、論文集『日本中世仏教と東アジア世界』を編む作業に着手した。その成果を、平成23年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)学術図書に応募して採択され、公刊することとなった。
|