研究課題/領域番号 |
22520682
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
上川 通夫 愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (80264703)
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キーワード | 大蔵経 / 一切経 / 日本中世仏教 / 東アジア世界 / 聖教 / 普門寺 / 山林寺院 / 国境 |
研究概要 |
韓国慶州の海印寺に所蔵される13世紀の大蔵経板木を実見した。このほか、韓国の梵魚寺・仏国寺・芬皇寺・慶州国立博物館を見学して文化財に接するとともに、皇龍寺跡・石窟庵などの古寺を探訪した。刊行物を中心とする史料を入手した。 昨年度に引き続き、中国・韓国・日本の大蔵経に関係する史料を、調査報告書・展示図録・学術刊行物から探査した。「一切経年表-十二世紀末まで-」の第二層構築の作業を進め、収集史料の整理を行っている。本研究終了時点における報告書に盛り込むため、精度の高いデータ整理の試みを継続している。 一方、これも継続事業として、大蔵経をとりまく日本中世の仏教史文献の拡がりを捉えるために、愛知県豊橋市の普門寺を集中的に調査した。中世の仏教文献(聖教)をはじめとする、新出史料について、今後の研究の足がかりを築いている。調査は継次年度にも続中する。適宜、学会に報告する方向である。 単著『日本中世仏教と東アジア世界』を刊行した。既発表論文を本研究課題に沿って集成したもので、新稿「中世山林寺院の成立」も本研究による調査を盛り込んだものである。刊行には平成23年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)学術図書を受給した。共編著『国境の歴史文化』(清文堂出版)に「国境の中世寺院」を執筆して成果の一部を公表した。ブラジル・サンパウロ大学の日本文化研究所での招聘講演のほか、学会報告(歴史科学協議会大会)などで、本研究の成果の一部を公表した。多くの研究者から意見を聞く機会となった。その内の2件は次年度に学術誌上で公表される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料調査、現地見学、成果報告それぞれについてバランス良く推進することができた。特に論文集の刊行によって、本研究課題の新たな展開をも見出すことができた。中国での調査研究が延期になったことと、アルバイトを雇ってのデータ整理が遅れていることは、次年度の課題として自覚される。
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今後の研究の推進方策 |
計画の後半段階を迎え、とりわけ調査データの整理について、緻密で効率よい遂行を必要とする。一方は大蔵経そのもののデータを整理し、他方ではその裾野を構成する寺院文献群の具体事例を提示する。粗漏のない校訂を実現するために、知見ある補助員との綿密なやりとりを心がける。 2年間の研究によって、本研究の課題を、中長期的な中世史研究に結びつける視点が明確になってきた。本研究の最終年度での報告書において、そのことにも関説する論述を試みることとする。
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