本年度は、中世山口文化を形成するモノとして大内氏に由来する肖像賛の史料収集をおこなった。収集作業は、関係諸機関などでの史料調査のほか、『五山文学全集』『五山文学新集』などの刊本からの抽出作業をおこなった。 とくに、注目すべき史料としては、山口市にある豊栄神社所蔵の毛利元就像に注目した。像主は大内氏ではないものの、そこに書かれる賛文の内容は非常に大内氏の存在を意識したものとなっており、中世山口文化における大内氏の存在の大きさを彷彿とさせる。 また、当初、次年度以降の考察素材として考えていたハーバード大学サックラー美術館所蔵「源氏物語画帖」について、当初、この史料が寄進された妙栄寺(山口県下関市)で講演する機会が与えられたため、当該史料に関して予備的考察をほどこし、市民にその成果を還元することができた。 また、中世山口文化の舞台となった中世都市山口に関する概説を出版することができた。この概説書は、山口に残る文化遺産を切り口としてやまぐちの歴史と文化を語っている。とくに、「西の京やまぐち」という標語が生まれた背景を歴史的に探究することに成功したと考えている。
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