本年度の研究実績は1、日本・台湾での資料収集や調査、2、その成果としての口頭発表と論文執筆、の二つに大別できる。1については、夏期・冬期休暇に台湾・台北に滞在し、国立中央図書館台湾分館を中心に日本統治期の台湾におけるスポーツ史、なかでも相撲について、台湾社会にどのような経緯で普及・浸透していったかという問題意識に基づいて主に日文資料を閲覧した。日本国内では、日本体育大学図書館所蔵のスポーツ雑誌の閲覧を中心に、戦前の大相撲の活動に関する資料収集に専念した。また特筆すべきは、神保町などの古書店などで購入した戦前のスポーツ雑誌(『野球界』『相撲と野球』など)に多く記載されている1930-40年代の大相撲に関する記事の収集・整理が順調に進捗したことである。これらのなかには大相撲の外地巡業(満洲・朝鮮・台湾)に関する具体的な記述や写真があり、これまでほとんど言及されることがなかった戦時期の大相撲巡業に関して、網羅的な検証作業を行うための貴重な資料となることが今後期待できる。 2については、『現代思想』11月号(2010年)の「大相撲」特集に論考「帝国日本の相撲 外地から見た「国技」と大相撲」を、本務校の論集『目白大学人文学研究』に「「外地」と相撲一「国技」をめぐる一視点」を掲載した。また、国際日本文化研究センターの共同研究会「植民地帝国日本の支配と地域社会」において口頭発表の機会を得た。(「八尾秀雄の台湾経験」・2011年1月23日)。
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