初年度に続き本年度も、研究実績は1、日本・台湾での資料収集や調査、2、その成果としての論文執筆、の二つに大別できる。1については、昨年同様、台湾・台北に滞在し、国立中央図書館台湾分館を中心に日本統治期の台湾における相撲関連資料を閲覧した。日本国内では、国会図書館所蔵の関連雑誌を中心に新聞・雑誌資料を収集した。また神保町などの古書店などで購入した戦前のスポーツ雑誌(『野球界』『相撲と野球』など)に多く記載されている1920-40年代の大相撲に関する記事の収集・整理も継続的におこなった。 その結果、戦前の台湾で活動したアマチュア相撲指導者八尾秀雄について、これまで言及されることのなかった彼の1920年代の活動の一端が明らかとなったほか、明治~昭和期の大相撲の台湾巡業に関しても、それを受け入れた在台日本人社会の興行主たちの動きなどを具体的に検証することができた。植民地台湾において庶民の娯楽として存在感をもった大相撲やアマチュア相撲をめぐり、在地社会の台湾人、日本人それぞれがどのように関わったかを知ることは、従来の植民地史研究のなかでも蓄積の少ない娯楽史・スポーツ史の分野で一定の意義があるものと考えている。 2については、平成24年内に発刊予定の『地域社会からみた帝国日本と植民地朝鮮・台湾』(思文閣出版)に論考「植民地台湾の『国技』相撲と大相撲興行」を執筆したほか、その一部に加筆・修正したものとして、『目白大学人文学研究』(第8号、平成24年2月)に「植民地台湾の相撲-興行と『国技』」を掲載した
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