研究課題/領域番号 |
22520688
|
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
榎本 淳一 工学院大学, 基礎・教養教育部門, 教授 (80245646)
|
キーワード | 日本史 / 東洋史 / 文化交流史 |
研究概要 |
本年度は、当初計画した原本調査をあまり行うことができなかったため、漢籍の日本将来とその影響、そして漢籍将来の背景にある当時の国際関係の構造に関する研究を中心に行った。 まず、漢籍将来の背景としての隋唐期の国際関係については、「隋唐朝の朝貢体制の構造と展開」というテーマで研究をまとめ、唐代史研究会において口頭発表を行った。この研究により、遣隋使・遣唐使などの朝貢使が隋・唐王朝に朝貢する仕組みと、その関係の変化の理由を明らかにすることができた。これにより、遣唐使が隋唐の漢籍を日本にもたらす歴史的な背景をある程度説明することが可能になると考えている。この研究は、『唐代史研究』15号(2012年8月)に掲載される予定である。 次に漢籍の日本将来とその影響については、「天平宝字元年十一月癸未勅の漢籍について」としてまとめ、『史聚』45号(2012年)に掲載される予定である。この論文においては、天平宝字元年十一月癸未勅に見える漢籍を明らかにすることにより、藤原仲麻呂が隋唐期の漢籍を積極的に利用しようとしていたことを明らかにし、それ以前の南北朝期の学術中心の文化のあり方を大きく変える契機となったことを述べた。遣唐使舶載の漢籍が古代日本でどのように受容され、影響を及ぼしたかを具体的に解明した点など、これまでに無い新しい論点であり、有意義な研究であると考える。 上記以外にも、関連する研究文献の収集と研究史的な整理を押し進めることができた。また中間報告的な書籍の刊行を目指して準備を行っているが、予定より遅れている状況である。こちらもできるだけ早く刊行できるよう鋭意努力したいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
勤務先の役職(教育開発センター所長・孔子学院副学院長)などに任じられることにより、当初の予定より研究時間の確保が十分行えなくなったため、研究の進展に多少遅延が生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
まとまった研究時間の確保がもっとも重要であるため、土・日・休日などもできるだけ研究時間に充てることを考えている。 また、関連研究文献を効率的に収集するために、東京大学や早稲田大学など研究図書が充実している大学図書館を有効利用できるようにした。 原本調査については、当初の計画のようにできるだけ多くの原本を調査するという方針を見直し、調査先を絞り込みたいと考える。すなわち、より調査する必要性が高い文献を中心に史料調査を行うようにしたい。
|