研究課題/領域番号 |
22520688
|
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
榎本 淳一 工学院大学, 基礎・教養教育部門(公私立大学の部局等), 教授 (80245646)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 日本史 / 東洋史 / 文化交流史 |
研究概要 |
平成24年度は、主に日本古代における漢籍受容の問題を中心に研究を行った。その内容は大きく言って四つに分かれる。一つめは、漢籍流入の時期を確定するもので、『日本国見在書目録』に著録された漢籍のうち、遣隋使・遣唐使以前に日本(倭国)に流入してきた梁代の漢籍を特定するというものである。これまでほとんど未解明であった遣隋使・遣唐使以前の漢籍流入の実態を明らかにしたことには大きな意義があったと考える。 二つめは漢籍の受容がどのようにして行われたかという問題を扱ったもので、遣唐使が漢籍を舶載するだけでは効果的な受容はできず、国家の教育政策として、漢籍を教科書に指定することにより制度的に受容が進められたことを明らかにした。この研究も従来未開拓な分野に始めて鍬をいれたということで十分な価値があるものと思う。 三つ目は、漢籍の古代日本への流入における外交的な背景を考察したもので、中国隋唐朝の朝貢体制という外交枠組みを通じて行われたことを論じたものである。また、東アジア文化圏の変質の画期が唐・武宗朝にあったことを指摘した。 四つ目は、漢籍とならび日本古代の文化・政治・社会に影響を与えた仏典の舶載の問題を検討したものである。漢籍の流入状況を相対化して検討するためには、仏典の流入状況を明らかにする必要があると考え、主に8世紀の仏典流入の実態を解明した。その結果、仏典も漢籍と同様に唐朝の輸出制限が存在し、外交を有利にすすめる道具として利用されていたことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究がやや遅れている原因は、まず役職を兼務することになったためと、思いがけず卒論生の指導をすることになったため、校務が予想以上に忙しくなり、なかなか史料調査に出かける時間的な余裕が無くなったことがある。これにより、『日本国見在書目録』のテキスト校訂をあまり進めることができなかった。しかし、土日休日を出来る限り研究時間に振り向けたことにより、論文発表や学会発表に予定以上の成果を挙げることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
『日本国見在書目録』のテキスト校訂が遅れていることから、まず、この点を重点的に進めたいと思う。具体的には宮内庁所蔵原本の調査を出来る限り早い時期に実施したいと考える。校訂テキストはなんとしても完成させたいと思うが、しかし、同書の註釈書を完成させるところまでは至らないと思われる。その代わりに、漢籍の流入・受容・影響に関する研究を更に押し進め、より詳細かつ正確な註釈をつくるための基礎研究を拡充したいと考える。
|