研究課題/領域番号 |
22520695
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研究機関 | 京都造形芸術大学 |
研究代表者 |
末松 剛 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (20336077)
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キーワード | 宮廷儀礼 / 装束 / 支配秩序 / 史料学 / 平安貴族 |
研究概要 |
装束という色と形をともなうモノが、儀礼の時空においてどのような意味を担っているのか、という分析視角において、絵画史料は有用な検討対象であることより、『年中行事絵巻』の場面読解に初めてチャレンジした。具体的には巻15「関白賀茂詣」の公卿行列に着目し、それが承安三年時の事態を反映した結果であることを論じた。装束に着目した儀礼研究の裾野を広げる意味でも、絵画史料への広がりを今後も推進していきたい。 もう一つ具体的儀礼として「宇治入り」という摂関家行事に着目した。これも具体的には『玉葉』と未紹介の写本である『宇治入条々』という書状群を合わせて検討するとで、九条兼実の儀礼運営意図を装束の問題も含めて検討したものである。この調査では宮内庁書陵部における原本閲覧によって字句の確認などを行い、翻刻と写真版を付した、史料紹介としての意味も併せもつ論稿に仕上げている。 史料学的研究という点では、近世の有職故実書の中で、とくに大部な装束関係史料の調査に着手した。滋野井家で編集された『松蔭拾葉』『滋草拾露』の二点である。とくに後者は写本が数多く残されており、しかしその内訳は所蔵機関によってまちまちのため、現存する『滋草拾露』全体像は不明であるといってよい。内容的には優れたものであるので、将来的な全体像の紹介に備えて、今後も継続調査を各所蔵機関において行う予定である。 以上、実際の儀礼運営において装束の果たした役割の解明と、そうした装束に関する事実を故実として伝承した結果である写本史料調査を二つの柱として、今後も史料学的研究の名にふさわしい研究に努めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
儀礼運営の実態における装束の研究については、絵画史料に裾野を広げつつ論稿にまとめることができた。「宇治入り」についても、史料調査をふまえた未紹介史料の紹介を兼ねた論考に仕上げている。さらに近世故実書の中に有益な装束の専論書を見出し.その全体像の把握に現在取り組んでいる。その成果がおそらく研究成果報告書の中心になるであろう。今後の見通しが立った一年であった。
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今後の研究の推進方策 |
史料所蔵機関における史料調査を継続することは最終年度まで続くが、それに見合う大部でかつ内容的に有益なr松蔭拾葉』『滋草拾露』を見出すことができたことは、大きな成果であった。すでに中心となる国立公文書館所蔵の数本について調査を終えているので、引き続き東京大学史料編纂所、大阪府立中之島図書館など、同史料の所蔵先をめぐる予定である。その後は内容のデータ化と簡便な目録の作成を以て、研究成果報告書につなげていく予定である。
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