研究課題/領域番号 |
22520695
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研究機関 | 京都造形芸術大学 |
研究代表者 |
末松 剛 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (20336077)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 宮廷儀礼 / 装束 / 支配秩序 / 史料学 / 平安貴族 |
研究概要 |
装束という色と形をともなうモノが、儀礼の時空においてどのような意味を担っているのか、という分析視角において、絵画史料が有用な検討対象であることを昨年度より研究指針の一つとし、『年中行事絵巻』に続いて、近世宮廷儀礼に関する絵巻物に着手した。時代が下ったことになるが、最終目的である前近代宮廷儀礼史研究のためには必須の課題の一つとなる。江戸中後期には朝儀の再興が進められたことは先行研究のすでに指摘するところであるが、それにともなって公家・武家を問わず絵巻物として宮廷儀礼の風景を仕立てることが、史料的にあるいは作品として散見する。その精度の高さを明らかにしつつ場面を読解することで、前近代宮廷儀礼の史料学的研究を進めることができよう。本年度は史料調査に終始したが、すでに二、三の論稿をなす準備まで済んでいるので、最終年度には論考の発表と共に報告書作成にもつなげていきたい。 具体的儀礼としては昨年度に投稿済みであった「宇治入り」という摂関家行事に関する論考が刊行された。未紹介の写本である『宇治入条々』という書状群の史料紹介としての意味も併せもつ論稿である。 近世の有職故実書の史料学的研究については、すでに着手している『滋草拾露』の写本調査を継続している。将来的な全体像の紹介に備えて、今後も継続して調査していく予定である。 以上、装束に関する事実を故実として伝承した結果である写本史料調査と絵画史料の読解による時代の中への位置づけにより、史料学的研究として最終報告書をまとめていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
儀礼運営の実態における装束の研究として絵画史料に着手したところ、近世宮廷儀礼に関する絵巻物に興味深いものが多くみられ、その制作過程や故実に照らした精確さなど、史料学的研究として取り組むべき価値のあることが明らかとなり、今後の大きな指針となる手応えを感じている。 一方、近世故実書における装束の専論書については、史料調査の継続中であるが、写本を伝える所蔵機関についてはすでに目途を付けているので、速やかに残された調査を遂行したい。その全体像が研究成果報告書の中心になる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
近世宮廷儀礼に関する絵画史料に対する装束の側面からの有職故実学的研究を進めていきたい。近世朝廷における朝儀再興の動向において、大部な絵巻物が作成されている事実、その精確さについて、あらたに提言していきたい。その動向に関する歴史事実は、装束故実の視点から史料学的研究を展開する本課題の重要な検討課題である。 故実書に関する研究では、史料所蔵機関における残された史料調査をふまえ、『松蔭拾葉』『滋草拾露』の全体像を把握することにつとめたい。国立公文書館所蔵、東京大学史料編纂所、大阪府立中之島図書館などはすでに調査しているので、引き続き所蔵先をめぐる予定である。
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