研究課題
まず竹迫忍氏が新たな唐代の暦日復原案を作成した。同時に唐での進朔制度の変遷が明らかとなった。また日本の暦日研究では不明とされていた、日本での麟徳暦(=儀鳳暦)施行期に進朔が行われなかった理由も判明した(なお中国ではすでに同様の指摘があった)。また、この復原案と比較しての検討により、従来曖昧であった日本での大衍暦施行期における、進朔限の変遷も解明された。次に日本で進朔限が変遷した理由を、唐と比較すると、五紀暦の影響が顕著に見られることが判明した。五紀暦は従来はあまり評価されていなかったが、日本では唐の最新暦法と誤解された時期があり、唐情報の伝播の在り方に興味深い事例を加えることができた。また、暦日とも関わる天文占の書物として、平安時代以降の陰陽道で重視された『天文要録』の不明写本(旧内閣文庫本)を発見することができ、その写本系統について見通しを示すことができた。またこの補助金事業の集大成として、『日本史を学ぶための<古代の暦>入門』(吉川弘文館)を6月に刊行する。これは、中国式暦法とそれに基づいて造られる暦が、どのように日本社会に導入され定着するか、それが日本の政治・社会にいかなる影響を及ぼしたのかについて、新しい知見も入れつつ、一貫した見通しを示したものである。本書は本事業の研究成果を、概説書として公表することで、日本史研究者以外にもわかりやすく提示するものである。このほか、初期陰陽道と災害観との関係、陰陽道を構成する占術を日本にもたらした仏教伝来に関する『日本書紀』の記事の評価、『続日本紀』淳仁天皇紀の暦日についても明らかにした。本事業の目的は、日本古代の暦・時刻の制度・観念とその浸透、そこに初期陰陽道が果たした役割の解明であった。2012~2013年度の研究成果は、時刻については十分ではなかったものの、暦については、かなりの成果があったものと認められよう。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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季刊悠久
巻: 129号 ページ: 37-50
活水論文集 人間関係学科編
巻: 56 ページ: 13-21
佛教史学研究
巻: 56-1 ページ: 65-72
東洋研究
巻: 190 ページ: 77-97