平成24年度は、本研究課題の最終年度に当たるため、これまでの調査・研究成果を踏まえつつ、引き続き本邦及び台湾など国外における現地調査研究を進めた。また、国内外の研究協力者と意見交換を行うとともに、本研究課題の全体像の把握と取りまとめを行い、国際シンポジウムにおいて成果について報告を行った。主な現地調査研究の内容は以下の通り。 平成24年6月15日~6月18日に日本大学文理学部図書館及び国立公文書館などにおいて植民地統治史にかかる資料収集を行った。特に日本大学文理学部所蔵の旧「満洲」資料と台湾資料との比較検討が行えたことは、本研究の進展に大きな意義があった。さらにこの間、来日中の中国・重慶市档案館鄭永明氏との間で中国における植民地史資料の保存と整理について意見交換を行った。この点は、本研究課題の要点である日本・台湾・中国の3地間での関係を考察する際に、いかなる資料的制約があるのかについて了知するという点で意義深いものとなるとともに次の課題を導くものとなった。また、平成24年8月5日~14日に台湾における伝統の継承と近代的変容にかかる史料収集を昨年度に引き続き行った。具体的には、台北、台中、台東などの日本仏教勢力の植民地布教と関連する寺院(東和禅寺、宝覚禅寺、東禅寺など)において、実地調査を行うとともに、国立中央図書館台湾分館(現国立台湾図書館)、国史館台湾文献館などにおいて資料収集を行った。その結果、3地間の伝統の継承と近代的変容への考察においては、第二次世界大戦前後の寺院形態の変容の解明が重要な視角のひとつとなることが明らかとなった。 以上の調査研究を踏まえ、平成24年11月9日~12日に中国・杭州に出張し、中国社会科学院近代史研究所中外関係史研究室主催の「第四届近代中外関係史国際学術シンポジウム」に参加し、本研究課題の総括的な報告を行い、関連研究者との意見交換を行った。
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