今年度の研究実施計画としては、まず、既に訳注をほぼ終えている康煕6年の蒙古例法典を修正しつつマッキントッシュコンピューターに入力していく作業を予定していた。新しいコンピューターでユニコードの文字が使用できるようになったため、特別なソフトも使用せずに、作業は、まずまずのペースで進んだ。しかし、なお正確な転写と翻訳に再検討すべき余地のある部分がかなり残っているため、完成というところまでは至らなかった。この点は、引き続いて、来年度に実施していく予定である。 次に、以前1995年に『東洋学報』誌上で筆者が発表した中国・国家図書館所蔵の八旗兵用モンゴル文法規「崇徳三(1638)年軍律」の蒙古例への編入過程に関して、新発見の上記康煕6年の蒙古例法典や、康煕35年頃の蒙古例法典、乾隆年間以降の『蒙古律例』等と比較しつつ、より詳しく実証した文献学的な論文を東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所のジャーナルに発表するという予定があった。 こちらに関しては、無事、最終的な修正を大量に加えつつ、現在、再校まで終了することができた。実際の出版は4月になると思われるが、日付の上では、今年度の3月末の日付で出版される予定である。この論文で新しく検討できた点は、まず、台湾・中央研究院の歴史語言研究所に所蔵されている漢文版「崇徳三年軍律」テキストや、河内良弘氏が訳注を出版された内国史院档に含まれる満文版「崇徳三年軍律」テキストと直接比較することによって、各条文の正確な意味を確定できたことである。次に、この法規の内容が康煕6年の蒙古例法典には収録されておらず、康煕35年の段階で初めて蒙古例法典に編入されたことが判明した。さらに、編入時の理藩院官僚による判断やその後の条文整理に関しても、発見が得られた。
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