本年度は、資料収集を中心に研究を進めた。中国での現地調査の他、石刻資料の専著や出土報告書・拓本資料から必要な情報を抜き出し、デジタル化を実施した。データベースには、文献・遺址・出土物・釈文などのテーブルを作り、それぞれ5~20程度の細目を設けた。北朝造像資料約350件、北朝墓誌資料約1200件をデータベースに組み込んだ。 それと並行して、石刻資料の女性記録の初期的分析を行った。石刻資料の内、墓誌銘・造像記にのみ妻子等の女性に関する記録が刻されている。石の裏側などに夫人や子供の氏名・年齢ばかりでなく、夫人の出身地、夫人の父親の名や官職、子供の官職、女子の子供の場合はその嫁ぎ先まで詳細に記述され、一資料のみで複数の一族の家系図が描くことができる資料があった。造像記と墓誌銘に共通する姓名が見られる者も散見された。 また、特筆することができるのは、女性の墓誌・造像記が多数出土していることである。女性の氏名等の詳細な記録は、史書等の歴史的文献に登場することは少なく、これらは新しい視点で分析するための資料とすることができる。女性の石刻資料は、墓誌・造像題記だけでも数百件あり、その中に含まれる子供等の記録を含めると、1000名以上の新しい人名を追加することができる。新しい閨閥構成を考察できる重要資料であることが確認できた。
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