研究概要 |
当該年度には、当初の予定通り、インドおよびイギリスをベースにして在外研究を遂行し、文書館等での文書史料の収集や商人・事業家への聞き取り調査を集中的に実施すると同時に、国際ワークショップという場を通じて、研究成果の発信や国際学術交流の促進を行うことが出来た。 より具体的には、インドの国立公文書館での旧英領インド政府の工業育成や貿易関係の史料、イギリス大英図書館での旧インド省の工業所有権関係の史料を、参照できた。また、23年度中に予定していたイギリスからのスウェーデンとチェコへの渡航・出張を、諸般の事情で、24年度前半に繰越して実施することが許された。前者の国立文書館では、マッチ製造事業者のインドへの輸出事業や直接投資に関する史料を、そして、後者のガラス装飾美術資料館で、インドに輸出されていた腕輪やビーズに関する史料を、集中的に参照することが出来た。 また、成果に関しては、「現代インド地域研究」の主催により開催された「メディアの政治性」をテーマとした国際ワークショップで"The Proliferation of Matchbox Labels in Modern India and the Socio-Political Entanglement, 1880s-1940s"を発表し、また、2012年1月にはロンドンで"Diversity-drivenPathofEconomicDevelopment:Small-scaleProduction,Commodity Consumption and Socio-cultural Representation in Modern India"と題する国際ワークショップ(INDAS・頭脳循環・「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」共催)をオーガナイザーとして組織する機会を得て、自身も"Intervention of Glass wares in Modern India : New Phase of Production/Consumption in Ornaments and Perfumery Oils, 1900s-1950s"を発表した。 総じて、近代インドにおいて軽工業製品とその消費が有した文化・社会的な表象に関して、経済史・政治史・文化史などを架橋的して統合する歴史理解の枠組みを徐々にではあるが提示しつつある。
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