本研究の目的は、16世紀~18世紀、西インドのグジャラート地方スーラトを中心として商工業がめざましく発展し、その発展を支えたインド・商人グループ、パールスィー商人団の形成と成長の過程を、ムガル帝国やヨーロッパ東インド会社の文書の分析によって明らかにすることである。このグループは18世紀にボンベイを拠点としてさらに発展し、イギリス時代に今日見られるインドを代表する財閥を形成するにいたった。 最終年度の研究実施計画に基づき、ロンドンのBritish Libraryで、I.O.R.史料を調査し、史料内容を分析・調査した。また、基本的な史料集、Original Correspondenceやイギリス東インド会社の商館記録Surat Factory RecordsやBombay Public Proceedingsなど、さらにオランダ東インド会社関係史料を調査研究した。こうした史料の分析にあたっては、24年度月一回程度の研究会を開き、史料分析に関する共同研究を行いその成果はまとめ、専門研究誌に掲載して公表した。 従来の通説によると、ムガル時代の商工業の発展がどれほど大々的なものであろうと、その後のインドの経済発展、社会構成の変革にはつながらないとの見方が一般的である。しかし、本研究のように、ムガル時代における個々のインド商人団の形成と発展を実証的に研究調査することによって、従来の通説への変更をせまるものであり、この点に、本研究の新しさと意義がある。 現代の企業集団につながる商人グループ、パールスィー商人やジャイナ教徒商人などのムガル時代におけるその形成・発展に至る過程を実証的に明らかにすることはインド経済史のみならず、現在のインドの発展を理解するうえで重要である。本研究の、インド・パールスィー商人団の形成と発展に関する研究の成果は、すでに専門研究誌に掲載し公表した。
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