本年度は、「動員機構の形成過程と機能」に焦点をあてて、計画をもとに以下の通り研究を行った。 まず、申請者はすでに当該研究課題に関して韓国を中心に一定程度の資料収集を行ってきているが、研究対象および時期が広範にわたるため、本年度も引き続き資料調査および収集を継続し、ソウル、台湾、沖縄などの大学図書館、各国公立図書館、公立資料館などにて資料収集を行った。資料収集と同時に、関連研究者と当該テーマについて、資料・研究状況・研究方法などについて論議した。資料収集にあたり必要な機材(ノートパソコンなど)を購入し、研究環境の整備を図った。 研究課題と関連し、「朝鮮総動員体制」の構造分析にかかわる論文を2本執筆した。まず「朝鮮総動員体制」の構造について『岩波講座東アジア近現代通史第6巻』に「朝鮮における総動員体制の構造」を執筆した。本稿では、「朝鮮総動員体制」分析にあたっての全体構造の概要を整理し、今後の具体的個別研究のための青写真を提示した。また、「朝鮮総動員体制」下での労働力動員の実態について『戦争責任研究』に「朝鮮人強制動員における労務動員計画と地方行政」を執筆した。本稿では、「朝鮮総動員体制」の末端組織である地方行政に焦点をあて、労働力動員という具体的事例を通してその機能と構造上の役割を分析した。さらに、「朝鮮総動員体制」によって動員された朝鮮人労働者の朝鮮半島への帰還についての学会報告を行った。
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