研究概要 |
本研究の目的は,士族と呼ばれる16-17世紀モスクワ国家の社会層を取り上げ,彼らが,この時期の社会生活および中央(モスクワ)と地方の統治において果たしていた役割を,解明しようとするものである。本研究は,追加配分となったため,当該年度の研究開始は,後期(11月)からとなった。研究の実施条件と期間が限られる中で,研究実施計画の1.「研究文献および史料(資料)の国内調査」については,早稲田大学総合図書館において,士族層の軍事的な役割に関するボブロフの最新の論文をはじめ,本研究のテーマに関する研究文献の調査・収集をおこなった。また,実施計画の2.「文献および史料の訳読」については,以前から継続して参加している「17世紀ロシア法典(『ウロジェーニエ』)研究会」の月例会のうち,10月および12月の例会に出席して,法典の一部の逐語訳をおこない,討論にも参加した。実施計画の3.「基本的な文献・史料の整理・紹介」については,前述の調査において収集した文献その他を,今後,順次整理・紹介していく予定である。これらの研究は,ヨーロッパ諸国では比較的古くから注目されてきている研究テーマであるが,わが国ではほとんど研究されていないというのが実情であり,学界にも十分に貢献できるものである。さらに,これも研究代表者が継続して取り組んでいる軍事における士族の役割という問題については,クリステル・ヨルゲンセン他著『戦闘技術の歴史3近世編』(創元社)の監修作業をおこなった。本書は,わが国ではまったく類書のないもので,16-17世紀の,いわゆる近世西ヨーロッパの国家と社会の基本的特徴を理解するうえで,学界のみならず,幅広く一般読者にも有益なものである。
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