研究課題/領域番号 |
22520731
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
浅野 明 山形大学, 人文学部, 教授 (90133909)
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キーワード | 西洋史 / ロシア / モスクワ国家 |
研究概要 |
本研究は、16-17世紀のモスクワ国家における社会統合の実態と特徴を、士族と呼ばれる中小勤務人層の社会的・政治的活動をとおして解明しようとする試みである。平成23年度の目標は、士族層の階層分析をおこない、それを、当時のモスクワ国家の中央および地方の統治機構の中で果たした彼らの役割と関連させて考察することであった。そのための研究計画と成果は次のとおりである。 1. まず、基本文献の調査と入手については、比較的順調な進展をみた。また近年、当該テーマに関する研究文献が相次いで刊行されており、そのうちの基本的なものについても、入手できた。 2. 上述した文献および史料の紹介と訳読は、現在進行中である。またこれとは別に、中世ロシア研究会の一員として参加している「1649年法典」の訳読作業は、昨年度前半に完了し、現在は、17世紀初頭の動乱時代の同時代史料「パーリツィンの回想録」の訳読に取り組んでいる。これらはいずれも、17世紀の基本的な史料であり、本研究にとっても稗益するところが大きい。 3. 隣接する研究テーマ、特に軍事勤務人としての士族層についての研究は、引き続き「軍隊と社会の歴史研究会」の例会に参加するとともに、同研究会が進めている軍事史関連の史料・文献紹介の課題にも取り組んだ。後者の成果は、今年度中に刊行される予定である。また、軍事史研究から派生したものではあるが、日本人の戦争体験、戦争認識の特徴について考察した小論を執筆した。これは、震災の影響等で刊行が遅れて新年度になったが、本年4月にすでに刊行されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初あ予定は、おおむね順調に進行している。訳読の進行がやや遅れているが、これも当初の計画を変更するほどのものではない。また、成果の刊行が遅れているのは、震災の影響など、もっぱら技術的な理由によるものである。一部は今年度に入ってすでに刊行されており、いずれの問題点についても、全体として今年度中には克服できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
軍人および官僚としての士族層の研究は、軍事史関連の研究成果と一体で進められてきた。これらの研究の基礎作業については、文献・史料紹介の共著本と、戦闘技術に関する監修本の2冊が、ともに本年度中に刊行されることになっており、当初の課題をほぼ達成できる。したがって本年度は、士族層の国政上及び軍事上の実際の役割を、史料に基づいて具体的に明らかにする課題に力点を置く。具体的には、収集された文献の読解と研究会等での報告であるが、後者についてはすでに本年6月に実施が決定しており、その準備も順調に進行している。
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